中の下アイアンマンの作り方

IRONMANがみんな凄いわけじゃ無い!中の下トライリーマンがちゃっかりIRONMANを目指すブログ

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初挑戦!!『IRONMAN Cairns 2023』No.4: ラン

<”初挑戦!!『IRONMAN Cairns 2023』No.3: バイクの続き>

 

あっぶねぇ〜!

危うく年を越すとこだった…!!

 

遂に本番!! 中の下IRONMANは完成したのか?!

2023年6月18日

中の下トライアスリートの7年越しの夢の大舞台、

『Cairns Airport IRONMAN Cairns 2023』!

 

ご存知、殺人的遅筆でお送りしてきたレースブログ。

引っ張り過ぎて”あの時の痛み”の記憶はもはや希薄ですが、ついに感動のフィナーレです!

 

 

全てはランを走り切るため…

T2の入り口でボランティアさんにバイクを託してランバッグを拾ったら、着替えテントに入っていい感じに日焼けした他の選手達に混ざってチャチャっと装備をラン用に切り替えました。

 

180Kmのバイクを終えてT2までのレース展開をまとめ:

・スイム=1:33:11 (目標タイム+8分)

・バイク=6:53:41 (目標タイムー6分)

二つのレッグのトータルで、目標タイム+2分。

 

この時点では「ほぼ目標通り」なのはわかってました。そして、その上手くやってこれてる事実がこの後のメンタルに大きくポジティブに影響したと思います。

 

コロナで予期せず追加の準備期間が与えられたのに「ランは半分以上歩きました…」と言うのは残念すぎる…。スイムとバイクは絶対に頑張り過ぎない様にしてきたけど、ここからは更に集中して失敗しないレースの仕上げです。

 

目標タイムは5時間30分

全てを出し切る覚悟でT2を出ました!

 

入りは慎重…

とはいえ、バイクの最後は向かい風の中アベレージ維持の為に脚を削りました。マラソンはベストでもサブ4.5。疲労や痛みで歩いちゃうとサブ6の可能性さえ…。ランに入ってすぐは脚が攣ってなかなか治らない事があるので、引き続き、慌てずコンディショニング・ウォークで脚の緊張をほぐしました。

T2からは歩いてスタート
出口で待っていた妻に「お待たせ〜!」

まずは悠然と戦略的ウォーキング!

300m以上歩いたかな…。

 

結果的にバイク上の補給は上出来だったので、T2では給水のみ。前年の佐渡AのT2では貪欲に補給食を頬張った結果、その直後にトラウマ的な腹痛を経験しました。身体がランを始める準備が整うまではなにも口にせず様子をみましたが、今考えると正解だったと思います。

 

ランのコースに出るとすぐに、Finishゲートへのレッド・カーペット入り口を横切ります。

オレンジ丸がレッドカーペット入り口
赤線が難解だけど動線はしっかりしてました

選手達はここを合計5回通過します。号砲から間もなく9時間…。速いエリート選手達はもうFinishゲート前の観客を盛り上げています。その賑わいを尻目に、自分の名前がIRONMANの称号と共にコールされる瞬間をぼんやりとイメージしながらゆっくりと走り始めました。

 

熱い応援とたくさんの笑顔

周回コースはメイン会場エリアを含む一周約10Km。コース両脇の賑わいはハンパなかったです!

 

とにかく、人、ひと、ヒト…。そもそもラン会場はCairnsの中心エリアなので、どこを走っていても必ず人がいて、応援や観戦を楽しむ声が聞こえてきます。

ついに通常開催となった2023年大会はこの小さな街が3年待ち望んでいたお祭り。パンデミックの揺り返し的な盛り上がりになっていたそうです。

そんな年に参戦できたのはラッキーでした!

 

その、お祭り騒ぎのIM Cairnsで嬉しかった事の一つが、レースナンバーに書かれたボクの名前を叫んで応援してくれる観客がたくさんいた事です。

全選手、レースナンバーに大きく好きな呼び名が印刷されてる

「Come on, AKIO!! Keep going!!」

AKIO! You are looking great!!」

「Almost there, AKIOーーー!!

…どこを走っていても、あちこちでこんな感じで応援してもらえます。

 

これ、海外のIRONMANではフツウらしいですね!

コース脇の観客や犬の散歩中のお年寄り、公園の地元の子供達、BBQ中の酔っ払い集団…、そこらじゅうでたくさんの人が選手の名前を友達の様に叫びながら応援してくれます。

最初は突然名前を呼ばれて、「え、誰?!」とビックリしましたが、たくさんの見ず知らずの観客からほんとうに何度も名指しで応援してもらえて、メチャクチャ励みになる!

 

この海外IMの文化、まじサイコーです。

 

基本的にレース中のトライアスリートは孤独ですが、周回コースの決まった場所に何度も応援してくれるグループもいたり、毎回腹から声をだして名前を叫ばれ続けると心から「ありがとう!見ててくれよ!」という気持ちになりました。

笑顔で走るとパフォーマンスも上がるし、なにより…嬉しい!

ボクも、観戦する機会があったらあんな応援をして一緒にレースを楽しみたいと思いました。

 

謎行動は続く…

入りのペースはかなりヌルく、チラッとGarminを見た時は6:35/kmくらいでした。

 

朝から必死にセーブしてきたとはいえ脚はもはやパンパンでストライドもピッチも上がらず…。フルマラソンで30Km過辺りで最初に脚が止まった時の感じに近く、この時の平均ストライドは80cm。ウルトラマラソン並み。

 

でもまぁ、中の下的には想定の範囲内で、そんな時の為にとりあえず色んな補給にすがる準備はしてありました。

ランのパーソナルニーズバッグには和菓子やMagOnやアミノバイタル

早速ピックアップです。

実際に使用したBikeとRunのパーソナルニーズバッグ
簡易保冷バッグになっている

ボランティアさんにレースナンバーを伝えて自分のバッグを受け取ると、なんだかやけに重たい。何だ?…とバッグを開けると、見覚えのあるドリンクボトルが一本…。

 

「 …マジかっ?!」

 

なんと、ホテルに忘れてきたはずのスペシャルドリンクが

「よう、待ってたぜ…」と言わんばかりにたたずんでいるでは…。

 

頭の中は大渋滞…、

「なんで?どうしてここに?!

 …てかコレ、ヤッたんじゃね!?

 いや…オレ、なにヤってんだ??

 ん?毎回ココに寄って飲むの?

 無理だろ。じゃあ持って走る…?

 いやいや…どど、どんな作戦?!」

 

再び補給戦略を修正です。今回は短時間で決めなきゃいけない。

エイドはたくさんあったけど、レース終盤に突然現れたスペシャルドリンクの魅力は中の下の胸ぐらを掴んで離しません。

 

で、…結局ソレ持って走りました。

まぁまぁ重い

自分でも謎ですが、朝ホテルを出る前に「ラン最後に胃腸がダメなのに脚が攣ったら固形の和菓子では心許ない」と思った様な記憶が…。で、「きっとこの方が助かるだろう」と、咄嗟にスペシャルドリンクをランのパーソナルニーズに投入したのではないかと…。

しかし、バイクに積むはずのドリンクは冷蔵庫で冷やしたまま出発したという…。

 

場当たり的でグダグダの準備に自分でも閉口します。ロング経験の浅い中の下アスリートが、パーソナルバッグなんぞでアドバンテージを得ようとするからこうなるんでしょう。

 

片腕はまともに振れなかったけど、確かにもう脚が終わっていたところに実績レシピのスペシャルドリンクが飲めて少し元気が出た気もするので、まぁ良かったことにしましょう。← いいのか?

 

日暮れ…

一体どのくらいの距離をボトルを持ったまま走っていたのか…。

スペシャルドリンクをちびちび飲みながら、大体30分おきにエイド利用の要否を判断しました。気づくと街灯の明かりで走る時間になっていて、コース脇のカフェやレストランでは滞在中の家族連れが夕食中…。その横を、ボクら選手らがはぁはぁと走ってゆく光景はちょっと面白かったかな。

既にヘロヘロ。忘我の世界でもカメラの前だけは…

コースは舗装路ですが、マリーナ周辺のウッドデッキの区間だけは少しフワフワとして力が入らず走りにくかったです。ランは、時々Lumina主催の練習会でポイント練習とフォーム改善のアドバイスをもらっていたので、以前より長く良い姿勢で大きなストライドで走れる様になっていたと思います。でも、この頃には腰も膝も完全に落ちちゃって、写真ではもう着陸態勢に入ってますね。

 

でも、歩かずに走り続けられたのがよかった!

苦しかったけど、リキんでペースが落ちてきたら決まったルーティーンでフォームを必死に修正しながら走り続けました。

 

肩と耳の距離が広がるくらい肩の力を抜いて、胸から上前に引っ張り上られる感覚で一本の棒になって、わずかに前傾して腕をやや後ろ寄りに楽に振って、お尻〜ハムストを意識して同じ出力で少しでもお楽に前に進める様に…このフォームのリセットの繰り返し。

 

脚が終わっても歩かず安定して前に進めたのが良かったですし、トレーニングの成果であったならば本当に嬉しいレース展開でした。

 

自分との戦いとは言うけれど…

走り続けてはいましたが、3周目に入るとエイド時間を含むペースは7分台後半。

 

ラソンあるあるですが、低速巡行型ランナーと、少し走っては歩くのを繰り返す選手がお互いに抜いたり抜かれたりし続ける事ってありますよね?

Cairnsでも、ソレがありました。

 

その人はかなり鍛えている感じの長身の日本人男性選手で、なんとなく見覚えのあるチームウェアを着ていました。多分、佐渡で見たウェアで、中の下には明らかに格上の選手に見えました。

 

他の選手の周回数はわからないけど、抜いたり抜かれたりしていると言う事はその時点でのペースは拮抗していて、それがあまり何度も続くとなんだか知らんけど勝手に変な競争意識が芽生えたりして…wもちろん、中の下がその区間を先行していても実は周回遅れって場合もあるのですが、なぜかこの時は「速くなくても走り続けている方が強い」と勝手な持論で意地を張っていたと思います。

 

レースも終盤になっての低速デッドヒートw

普段ならば速い選手はやり過ごすのに、何度抜いてもスタスタと追い返してくるにわかライバルの動向に神経を研ぎ澄ましていました。不要に疲れるし結果的にどちらが先行してるかもわからない…。

 

全く無意味な対抗意識だったけど、おかげさまで集中力を保てた気がします。

名前も知らない低速バトルのライバルさん、ありがとうございました。

またいつか、脚が終わってからの強さを競い合う機会があったらよろしくお願いしますw

 

最終ラップ!

鉛の様に重くなった脚で最終ラップに突入!

もはや、どんな補給もストレッチも意味は成さない…けど、泣いても笑ってもCairnsはあと10Km!!

 

少し脱水気味で手が痺れてました。

フォームのリセットをしても、もはや姿勢を保てるのは一瞬…。すぐに着陸体制に戻ってしまって、のしのしと重そうに進んでいたと思います。

時折、エイドの氷をもらってウェアの袖や裾に押し込むと冷たくて少し頭がシャキッとしたんですが、そのささやかな気分転換もその頃には全エイドで氷が売り切れ…。

もはや、暑くても痛くても苦しくても、気力と惰性で走り続けるのみ!

ボロボロでも写真は笑顔がキホン
左手はガチガチに握って力が入ったままですね…

出し切った最後の5Km

最後の5Km。ペースはまもなく9分台と、はたから見ればもはや走っているのか歩いているのか…。

自前の補給食は終了。すがる様に摂り続けてきたカフェイン入りモルテンとスポドリで胃腸の調子もそろそろヤバい感じでしたが、脱水が心配だったので遂にエイドのコーラに手をだします。

 

これが効きました!!

ジワジワと減速していって、最後の山がコーラパワー!
Finish後は30分Garminを止め忘れ…

レース前半は御法度のコーラですが、なんなんですかね…このアゲっぷり!

実際、自分でも徐々に身体が動く様になるのがわかりました。

あれだけ動かなかった脚を動かしたコーラのメカニズムは、真剣に謎。

 

さっきまで追いつけなかった先行の選手が気付けばすぐ目の前…。

「初めからコーラで戦えばよかったのか?!」と思ってしまう。

 

Garminで見ると、ランスタート時点のペースにまで戻しています。

アドレナリンの効果もあるのかなぁ?安易な「コーラ信仰」は危険そうですが…w

 

最終盤になって変に走れたせいで、心拍数もガチ上がりでした。

こんなに長いラストスパートは初めて。
最大スパイクの後の約30分は、Finish後のデータ…

 

気付けばFinishゲート周辺のMCと観客の歓声が聞こえてきて、”5回目に来たら入る”分岐まできましたが…

 

「合ってるよね?入っていいんだよね?」…と、疑心暗鬼。

 

もう、Garminと自分を信じるしかなくて、祈る様な気持ちで暗い歩道のコースから分岐に入ると、突然カラフルな照明と大音量のEDMが流れるレッドカーペットが!!

 

”中の下IRONMAN"

Cairnsに着いた日に見て感激の涙を流したあのレッドカーペットとFinishゲート!

経験済みのミドルまでは日中にFinishするので、ロング特有の夜の会場に響き渡るEDMと猛烈な照明と、「次は誰だ?」と注がれる観客からの視線の集中砲火が圧倒的で、新鮮!!

会場の盛り上がりに一瞬押し戻されそうになって、レッドカーペットの端で一度立ち止まった気がします。

 

レース前から、最初のIRONMAN完走が叶うなら、レッドカーペットはたっぷり味わおうと決めてました。幸い、コース上ではあれほど前後に他の選手が走っていたのにレッドカーペットは中の下だけ…。

 

「いょっし、行くぜ!!」

 

めちゃくちゃ眩しかったのは、瞳孔全開の興奮状態だったのかな?

両側の観客が手を伸ばしてくれるので、それに応えハイタッチしながら進みました。

感無量のレッドカーペット
晴れ舞台を録画してくれてた妻に気づかず、後で少し怒られた…w

すごいレースだったけど、…もう終わっちゃう!」

アドレナリン効果も手伝って猛烈な幸福感と一緒に、なんだか寂しい気持ちも…。

 

爆音のEDMに混ざって自分の名前がコールされるのがわかりました。

”AKIO..., YOU ARE AN IRONMAN, Sir!!"

 

「オレのことだ!!」

 

今思うと初完走でレッドカーペットを完全に独り占めできたのは本当にラッキー!

どこまでも贅沢な時間でした。

 

そして、遂にFinish!!

両手の拳を上げてFinishゲートを歩いてくぐりました。

最後は歩いてFInish!

IRONMANになれた!!

 

きっと泣いちゃうだろうと思っていたけど、なんだかそれどこじゃなかった…。

ちゃんと最後にコースに敬意を払いたかったので、Finishゲート下でフラフラと振り返って帽子を脱いで、頭を下げました。

コースに向かって今までにない深さで礼…
…と言うか、頭を下げたままもう動けなかった。

スイム3.8Km:   01:33:11

バイク180Km:  06:53:41

ラン42Km:       05:30:55

公式記録: 14時間14分43秒

 

首に完走メダルをかけてもらって会場出口を見ると、一緒にNAS x LUMINAのスイム練に出ているLUMINA編集長のM氏がジンバルにつけた取材用iPhoneでボクを撮影しながら静かに左手でガッツポーズを作っています。

 

思わずボクもガッツポーズを決めてシャウト!

「ぃヨッシャーーーーーッ!!!」

 

…で、シャウトしてクラっときた…

まさかの過呼吸

 

この後、しばらく動けなくなってFinisher用テント手前のパイプチェアーに案内されて、スポドリを飲みながら落ち着くのを待つ事に…。

 

かっこワル過ぎ。だけど、ギリギリまで追い込めた様にも思えてスゴい達成感。

 

良く頑張った、オレ!!

 

RUNの各CPでの平均POSITION =726.9位

スタートが大体900位、スイムアップが845位、バイクラップは721位だったので、苦労しながらもなんとかポジションを守り切った形。苦手なランパートでしたが、中の下としてはこの結果には大変満足です。自分を褒められる、納得のレース結果となりました!

 

「IRONMANが全員スゴいわけじゃない」?

いきなり訂正します。IRONMANは全員スゴいです。

 

でも、IRONMANの中にも準備が不十分だったり、遅かったり、自分のミスでいくつものトラブルに見舞われたり、全く思い通りのレースをできない人はいます。事実、IM Cairns 2023でもDNFはたくさんありました。

 

でも、このロングのブランドレースに挑戦するトライアスリート達はみんな自分なりに大変なトレーニングと準備期間の中で、家族との生活や友人との時間や自分のエネルギー、時には仕事さえ犠牲にして自身のX-DAYを設定し、不安と緊張と数えきれない困難や葛藤を乗り越えた上でIRONMANの称号を手に入れます。

 

この、本人以外には知る由もない長い苦労と挑戦のプロセスを経て、目に見えない何かを身に纏って今日そこにいるIRONMAN達は紛れもなく全員スゴいやつらです。

 

今でも時々、ふとした瞬間に自分のFinishシーンを思い出します。

あの日から、自分はIRONMANだという自己承認の力で、困難な時も、究極何かに負けている時でも、なんだかそれでも自分は強いという気持ちを持って生きられています。

これがIRONMANの本当の力なのかもしれません。

 

体力や筋力の凄さをイメージいていたけど、Finishゲートまでの自分とゲートを過ぎてからの自分はもはや心理的別人だと言えます。

 

遅くても、”強い”。失敗してても、”強い”…。

「中の下でも、I AM AN IRONMAN」

 

<続く?>