OWS: トライアスロン最初で最大の壁
『中の下アイアンマンの作り方』のトレーニング関連のトピックで一番アクセスが多いのはOWSに関するブログ、特に昨年の投稿”オープンウォーター5年目でわかった事”へのアクセスが非常に多い様です。
もともとスイムが得意でIRONMANを志す人の割合って、消費税率以下じゃないでしょうか?
だから、初心者トライアスリートの多くにとってOWSは最初に立ちはだかる本当に大きな壁だと思うのです。
初心忘れず…と、堂々と言える程スキルアップしてませんが、気づけばOWSに対する不安が減ってより楽しめる様になってきています。46歳から始めて6年目…。自身のOWSに対する気持ちの変化やスキルの向上、新たな挑戦など、時々こうやってOWSで思うところをできるだけOWS初心者の皆さんと同じ目線で書き綴ってゆければと思いますので、できれば”5年目”から順番に読んで参考にして頂けると嬉しいです。
練習と努力の先にあるもの
皆さんは、…
「泳ぎきれないかもしれない…」
OWSをやっていてそう思ったことはありますか?
ボクは何度もあります。実際に泳ぎきれなかった事は幸いまだありません。
でも、海の中でそう思う瞬間は本当に恐ろしい経験です。
最初に言わせて下さい。
スイムが苦手なのにトライアスロンで完走を目指す皆さんは、本当に勇敢です。泳ぎに不安があるのならば、場合によっては自分の命に危険が及ぶ海で足がつかない沖に向かって泳ぐべきではありません。
そもそも海(オープンウォーター)は人間の生態系ではないので、ボクらは海では生き続けるのは不可能です。安全の事を考えるならば、ボクらは海で泳がなければ海で命を落とす事はまずありません。海で死なずに無難に天寿を全うしたければ、単純に海で泳がないのが正解です。
なのに、怖くても苦しくても、一生懸命練習して海に飛び込んで完泳を目指す我々スイムが苦手なトライアスリートは勇気と希望を持って今という時間を輝いて生きていると思います。
最近感じたのは、どんなにスイムが下手で遅くても、目標を持って練習と挑戦を続ける人はカッコいいと言うことです。もちろん、無理や無茶は論外ですが、十分な練習と準備で恐怖心を乗り越え、安全に目標のレースを完走できたならそれはどこまでも誇らしい事です。
アイアンマンという夢に向かって頑張ってやり遂げる…。誰かの役に立つわけでもないのでただの自己満足でしかありませんが、同時にそれは自己承認の極みへのプロセスです。だから、挑戦と達成を繰り返している人の方が自信を持って生きていますし、それ故に目に見えない何かを身に纏って輝いています。
冷静で、無理や無茶のない小さな勇気や努力の積み重ねを、一緒に続けましょう。
恐怖心や不安を無視する必要はありません。正しく向き合ってゆければ、その先にある新しい領域はもしかしたらもうすぐそこなのかもしれません。
6年の挑戦で克服したもの
繰り返しになりますが、OWSに向き合う事は初心者にとって不安で怖いものです。
中の下の人生初のOWSは2016年初夏でした。”怖さ”と言っても色々あるので、できるだけ具体的に当時怖かったものや事を並べてみると…
- 足がつかない →陸から離れる怖さ
- なかなか進まずとり残される怖さ
- 管理されていない環境への不信感 →安全なのか?
- 圧倒的な波や潮の流れ
- もしものトラブル →スキルと経験不足
- 長距離泳への不安
- 視界の悪さ
- 海の動物や浮遊物(クラゲ)
- 呼吸が苦しい →泳ぎに余裕のない怖さ
- 他の選手との接触でまともに泳げない(バトル)
…もっと、なにか根本的に戦わなければならない恐怖心があった様な気がするのですが、ただ単純に知らない事をやるのが怖かったのかもしれません。例えば子供が予防接種を怖がったり、初めてクワガタやトカゲに触る時の様な…ビビりの様な感情でしょうか。
※是非、あなたの「OWSで怖いもの・こと」をコメントで教えてください。
ただ、こうやってリスト化してわかってきた事があります。
相変わらずこわいもの…
OWSの環境は、安全・安心のために管理されたものではないので、なにがあっても自己責任です。果たして、そんな環境に身をおいても良い程のスキルや実力が自分に伴っているのか…?そう考えると、間違っても「絶対大丈夫!」とは言えません。人間の生態系じゃないんですから…。
下の5つは相変わらず怖いですし、まだまだ簡単には克服できないと思います。
1. 足がつかない →陸から離れる怖さ
2. なかなか進まずとり残される怖さ
3. 管理されていない環境への不信感 →安全なのか?
4. 圧倒的な波や潮の流れ
5. もしものトラブル →スキルと経験不足
海の根本を恐れる気持ち…とでも言うのでしょうか…。きっと、その恐怖心を持ち続ける事自体が今までもこれからも無事に帰宅できる理由の一つなのかなと思います。
上の赤文字のリストは、ある程度ボク自身でブレーキをかける事ができなければ危険が増してゆく部分だと思います。「泳ぎ慣れた海だから大丈夫でしょ」と、一人で荒れた海に飛び込んで沖まで進むのはやっぱり危険です。危険な事を怖いと思える事は、結局安全につながるのです。
とはいえ、恐怖心はパフォーマンスを削り取りますので、やっぱりOWSをする時はできる限り安全を確保した上で、「あぶない」と思う前に冷静に判断し対応できるスキルを経験者から学ぶ機会はお金を出してでも得るのが正しいと思っています。
怖いものは無くせていません、が…
基本的に、当時怖かったものは今でも怖いです。
ただ、慣れによって恐怖心が薄らいだものがあります。
6. 長距離泳への不安
7. 視界の悪さ
8. 海の動物や浮遊物(クラゲ)
9. 呼吸が苦しい →泳ぎに余裕のない怖さ
10. 他の選手との接触(バトル)
これらは、6年の間にたくさん経験したり理解やスキルを得られた項目かと思います。
これらは、当時の怖さが薄らいでいます。
項目別に解説します。
6. 長距離泳への不安
(決して速くはないですが)5KmのOWSを2度経験しました。海況次第ですが、「ゆっくり・慌てなければ泳ぎ切れる」という気持ちが効いています。
7. 視界の悪さ
OWSでは海中の視界・視野に頼らず、ヘッドアップで海面上の情報を利用するので、濁った水はもはやあまりに気にならなくなりました。でも、あまり汚い海で泳ぐのは嫌です…。
8. 海の動物や浮遊物(クラゲ)
クラゲは嫌ですが、いまでは海の生き物に会えたらラッキーで嬉しいくらいです。クラゲは大体、日本中の海でお盆の前後にかかわらずいます。でも、カツオノエボシやサメの様な危険生物に出会ってしまったら新しいトラウマになるかも??
9. 呼吸が苦しい
当然、強く泳いで筋肉への強い負荷が続けば呼吸は乱れますが、二酸化炭素過多(または酸素負債)がなくなるまでペースを落とせば、気づかないうちに、しかも10秒前後の短い時間で呼吸が楽になってきます。具体的には、キックを弱くして(止めて)、ストリームラインでグライドする時間を長くとった泳ぎにすると効果的です。また、色々と考えて脳を使うと酸素を消費するので慌てず静かに対処する事に慣れると呼吸を整え易いです。苦しいのは嫌ですが、少しの時間だけ耐えて対処できる様になれば大丈夫です。
10. 他の選手との接触(バトル)
これは性格による部分が大きい気がしています。満員電車に乗って、バランスを崩した際に「済みません」と隣の乗客に謝る人もいれば、全然気にしないでいられるタイプもいると思いますが、前者の様な選手はバトルが苦手な傾向にあるかもしれません。
見ず知らずの人の頭を掌で叩いてしまったり、斜行してきた選手とぶつかったり、蹴ったり蹴られたり…、日常では考えられない様な他人との接触、しかもかなり強い衝撃や屈辱を伴う接触が当たり前の様に起こるのがスイムパートです。そりゃあ、心拍もガチ上がりしますよね。
中の下も、バトルは満員電車の2万倍くらい苦手で怖かったですが、こう考える様になってから随分楽になりました。
「ここではお互い様」
殴られ、蹴られ、ブロックされて、肩も腕も動かしたいのに何故か真横にずっといて邪魔で仕方がない…。これ、ひらたくすると完全にお互い様です。
大切なのは敬意を忘れないことだと思っています。叩かれたから叩き返すでも、蹴っちゃったから一言謝るでもなく、「近過ぎるね。お互い泳ぎやすくなる様に間合いを取ろう。」と思って行動に移す…。これだけでお互い本当に気持ちよくスイムパートにのぞめます。
”バトル”と言われると勝たなければならない様な気がしますが、究極、スイムは個人でできるだけ速く泳ぐのが目的であって、その為に必要な条件を揃えられる様に泳げる選手が結果的に強い選手です。より多くの選手にダメージを与えても評価されませんし、お互いより泳ぎ易い状況を目指すだけでパックの速度は上がり、その分、心拍数は下がって”怖さ”も激減します。
まとめ
オープンウォーターと呼ばれる環境自体は、我々一般人には恐ろしく非日常的な環境です。自分の理解が進んでいない世界では注意しなければ危険な事があるので、OWSはこれからもなんとなく本能的に恐怖を感じながら接するしかないものなのかもしれません。
でも、逆に言うと理解が進んだ部分、特に自分としての接し方が出来上がってきている部分に関しては、慣れと共にうまく対応できる様になってきています。上に並べた経験則は中の下個人の感想でしかありませんが、誰でもOWSに向き合い続ける事で自身の理解や慣れ、対応方法を見出せるものなのではないかと考えます。
OWS完泳を目指し続ける皆さんがこれからも輝き続けられる様に、安全に十分注意しながら、無理なくゆっくりとOWSに挑戦し楽しめる様に祈っています!